Undine

憎んだり愛したり忙しい

わたしは幼児 チョコレート ぶどうジュース

すきになったら
女子会は好き。どんな時だって、恋の話題には事欠かない。
私たちは身に慣れぬ恋を語り、永遠の愛を夢みる。

恋愛のこととなると、皆言うことすべて大げさで、みんな平気で「その男じゃ幸せになれない、だから別れなよ」とか言う。ゆくさきに結婚があるなら、人の幸福を語りたくのもわかるけれども。

彼女たちのあくなき夢は、現状のあくなき否定をうむ。あんな男はダメ、こんな仕事はダメ。ならどんな人がいいの?

明白にその男の人に傷つけられたなら、そう言う結果に至るのもわかる。しかしながら、釣り合いとか、世間体とか、そういうのを基に意見されても困る。だってわたし自身、社会的ではおよそないし。

だから、社会的なあれこれとか言われても、無視できなくて頭がぐちゃぐちゃになって、結果彼氏を傷つけてしまう。だから、やめてほしい。いいバランスがわからないから。
そう、何が問題なのかと言ったら、男でなく自分なのだ。大体の場合、自分に原因がある。


過敏すぎる、と言われたことがある。
人の言うことが無視できないのだ。

普通の人は、ゆるやかに他者視点を獲得できる。なんというか、何かひどいことを言われても、あーこういうことあるよね、って無視できるんだと思う。

私にはそれができない。何か言われてしまえば、頭の中がそれいっぱいになるし、悪口の過去ログが頭を駆け巡って、死にたい気持ちになる。だから彼氏のことを少し批判されてしまえば、私はもう。
自分の思考の中にめちゃめちゃに突き刺される『規範』という雑音を、無視できなくなってしまう。

好き、好きになれそう、好きになっていく途中なんだ。すこしくらいならあなたがたの意見もお酒に溶かして飲めてしまうから、お願いだから、これ以上私の頭をかき混ぜないで。

The♡World's♡End

The♡World's♡End

 

 BGMです、どうぞ。


思えば全て、「許してしまう君の代わりに私が裁いてあげると決めた」だけの話だったように思う。一言でまとめれば、私のこの6年間とかってそんなものだし、むしろそれ以外のやりかた・それ以上の進めかたなんて皆目見当がつかない。
だってずっと、わかった試しがない。そういう意味では全く成長していないし、だからきっと私は、1人の時孤独で頭を潰される感覚がするのだ。
そういうありかたって、1人じゃ成立し得ない。思考をアウトソーシングしているから。頭なんてないのと一緒で、私は私が気持ち悪い。虫以下だと思う。虫だって自分の本能でシンプルに生きられるぶんマシか。普通に生きているだけで、余計な考えが、雪崩れるように流れ込んでくる。
私は優しい人が好きだった。優しくされるのはあたたかくて気持ち良い。
その体温を何が何でも失いたくないだけなんだと思う。だって優しい親に、優しく愛されてきたから。全ての根源にそれがある。
しかし、いつだって愛は半分こだった。小さい時は双子の片割れが疎ましくて、よく出し抜いたものだった。仲はわりかし良かったはずだったが、繰り返される『比較』に気を病んでしまったのだと思う。先にお菓子をもらうのは私だし、先に頭を撫でてもらうのだって私が良かった。
いつか、先におやすみのキスをされた弟が死ぬほど妬ましくて、1人で布団をかぶって朝を待った。
双子ちゃん可愛いねともてはやされるが、私は私が可愛いと言われたかった。
もう片方ではなくて、私だけが特別に褒められる・愛される理由が、ずっと欲しかった。
だから相手に承認されるために、何かしないと気が気じゃない。
異性の双子でもこうなのだから、同性の双子に生まれていたら、本当に私は妹を殺していたと思う。
 
あたたかくて優しい君の為なら、悪鬼になっても構わない。むしろ悪鬼になりたいだけだったのかもしれない。人の意思を借りれば、私はなんだって出来る。ああ気持ち良い。人の為を思い人の為に何かを・誰かをを潰すのには、何物にも変えがたい快感がある。だってこんなに悪いこと、他のやつにはできるはずがない。私にしか出来ないはずだ。
罪悪感を超える喜び、その先に優しい笑顔があるんだと信じられる気がしてしまう。君を汚す罪・悪意・仇敵すべて、君が知らないうちに全て雪いでしまいたい。君が正しく笑えるのなら、私は正しくなくたっていい。君のせいで悪くなる、それで構わなかった。だって最高に酔える、酒なしでも昼間からでも泣けてくるほど酔えてしまう。君の周りの人間は勿論、君本人すら出来ないことを私はしてあげられる。

誰か1人のために何かを捨てる。切り落とす。擂り潰す。
着々と進むその行為が、意味を持つのはいつなのだろう。
 
でも、必ずいつか、その優しい君の顔すら、ただの茫とした阿呆面に見えてしまう時がくる。頼まれていないことをしていただけ、謝意なんて必要なかったはずだ。でも私の苦悩を知らないその優しい顔が、とんでもなく憎く思えてくる。
 
私がこんなに辛いのは、他でもないこの人間のせい?
どうして私の努力を認めてくれない?
 
そればかり繰り返していた。
いつか終わる。それだけが日の習いで、私はいつも思い知る。この苦悩だって借り物だし、私は本当に誰の意思で、誰の望みでこんなことをしているのだろうか。
甘い君に甘やかされ続けるために、君が辛くも赦してしまったみなみなさまに火を放つ。優しさ、その快楽を知るのは私だけでいい。それだけ。
……ああやっぱり、私は私の意思でこんなことを繰り返していたみたいだ。救えない。本当にみんな、死んでしまえばいい……そこまでいって、思考停止してしまう。溺れるものは藁をつかみがちだから、私が今必死につかんでいるのが、藁でない確証なんてどこにもない。安心したくて手にしたものが、余計に不安を煽る。

脱兎、二匹

彼氏がいない時は気が多い女なので、一体誰のことだよ、と思われるかもしれないけれど、それなりに憎からず思っていた男友達(27歳)から、今更連絡があった。
いやまあ、懇意にさせていただいている方のことは基本的に憎からず思っているし、憎ければさっさと捨てる。手許に連絡先があるということは、好きか嫌いかで言えば好き、そういうことだ。

(いろいろ相談してた人だ。すごくテキトウで、雑で、なんかスゲー関西人。私が悩むのを、励ましも慰めもせず、ただヘラヘラと眺めているような、趣味のよろしい人/失礼)


その時、びっくりしたというよりもぞっとした。
そんな夢をおとついの晩あたりにみていたのだ。そんな夢のなかで、私はその悪趣味な男友達と楽しくご飯にでかけたし、それを知った彼氏に叱られて愛想をつかされていたからだ。
彼氏に怒られたことなんてないし、たぶん彼氏はそんなことでキレたりしない。夢のなかで怒っている彼氏の顔なんて思い出せない。

その友人とは、インスタグラムでちょいちょい♡を与え合う仲ではあったが、ラインが突然届くとは思わなかった。なあ、あけましておめでと、久々にのもう!って。あけましておめでとうよりも、良いお年を、のほうが聞きたかった。

9月頭に、私は寂しくて本気で凹み、好きでもなんでもない男と取っ替え引っ替え食事にいっていた。そんな頃。食事の途中で立席して帰ったり、行く前に音信不通にしたりしていた頃。
モラルの観点から見て、私は唾棄すべき行動しかとっていなかったけれど、道徳的に肯定されたかったわけではない。そんな悪行を、女として、男から肯定されたかった。彼は私をずっと、道徳の観点から叱り続けていた。だから彼はたしかに、私の友達であった。

それからずっと連絡もよこさないで本当に何考えているの、と半ば身勝手に憤慨しながら、優しくしてくれた人ではあるので、前年はお世話になりました、とだけ返事した。

するとまったくの突然に、携帯がビリビリと震えだした。私は慌ててリビングを離れた。息が震えた。こんなことがあるのか。こんな夢どおりの、こんな夢のようなことがあっていいのか、と。

女の子の友達に会いたいように、彼にも会いたかった。絶対にそういう関係にならない、と確信している。だから、安心感があった。


でも久方ぶりに声を聞く彼は、どこかおかしかった。
おかしいというより、私は知らなかっただけなのかもしれない。せいぜい付き合いなんて2016年の2月あたりからだし、1年経たないかどうかといったところだ。


いつもけらけらと笑い、ただでさえ細い目をさらに細くする(電話口からじゃ見えないんだけれど)彼なのに、気まずいような照れくさいような、はにかんだような声で話しかけてきた。「ごめん特に、何というわけではないんやけど」。
私がそうやって半泣きで電話をかけたら「おうメンヘラか」と言って茶化してきたくせに、自分だってそういうしおらしいこと言えるんじゃない。

「今日どうしてた」
「眼医者さんいって、おうちの経費計上とかしてた。ほぼバイトみたいなもの」
「お前の家かわっとるな。悪事加担しとるんか」
「まあね、そこそこですね」

俺はな、結婚式でしたわ。
その少し憂鬱な声音を聞いて、久々に優しくなれる気がした。
ああまた?今日も素敵だった?って訊いた。たのしげに。甘く。

「いや、ムシャクシャしたわ」
「…どうしてよ〜」
「ようわからんけど、結婚式って基本的にそういうもんやねん。高い金払って、大して美味くもない飯しか食われへんし」
「そうなの?最近もやっぱり結婚式ラッシュ?」
「まあな、まともなやつはみんな結婚しとるな」
「じゃあ△△さんはまともじゃないの?」
「どうやろな」

らしくないと思った。彼なら絶対に「俺はな選んで結婚してないねん」くらい言うと思っていた。

「まともだよ。……△△さん、もしかしてさみしいの?」
「さあな」
「さみしいと頭おかしくなるよ」
「そうなんか」
「私、9月は寂しすぎて△△さんに迷惑かけどおしだったもん。だから一旦連絡やめたの」
「なんやそれ。お前のアレは寂しいアピールだったんか……9月あたりか。あの時、お前よく横浜来たなぁ、お前の家からうちのほうは遠いやろ」
「うん、頭おかしかったから」
「……頭おかしかったから、なんか」
ほんま頭おかしいで、って大笑いすると思ったのに、彼は静かに笑っていた。ぞっとした。本当に、今電話している相手は、どこの誰なんだろう。全く心が読めない。

「ねぇ△△さん、ホントごめんねあの時は。私本当に頭おかしくて、迷惑かけちゃった。△△さんの言うことは正しいから、心入れかえて、言葉どおりあんまり男の人とは会わないようにしたの」

「ええんやって。おれ、ああいうのすごく面白いと思うタイプやから。お前が精神崩れて俺に電話かけてきたとしても、迷惑やなくておもろいだけやねん」

いつも通り彼が喜ぶ言葉をつめこんだから、彼はいつもの言い分で、へらへらと笑った。
心が読めないなんて嘘だ。実は全て直感していた。

横浜に行った理由なんて、「△△さんに何としてでも会いたかったからだよ」とか言って欲しかったんだろう。だってそうでもなくちゃ、私のことなんて迷惑に決まっている。柄にもなくしおらしいから、優しくしたいし、意地悪したくなったのだ。


「そういえばインスタグラムよう見とるけど、いい飯食ってるな。ま〜たお前は悪いことしてるんか」
「しつれい!悪いことなんてしてない。良いことしかしてないよ」
「良いこと、いいこと、な。察したわ」
「ねぇ、絶対かんちがいしてるでしょう。やだ、△△さん」
「じゃあはっきり言ってみ、良いことって何なん」

私は曖昧に笑ったまま、あえて答えなかった。この人にとってみれば、私が悪いことをしている方が都合が良い。
彼は私を正すのが好きだし、私は彼と飲む酒が好きではある。なんとなく彼氏がいると明言してはっきりと身を引かれるよりは、真相は隠した方がよいように思われた。

「お前ほんとおもろいな。相変わらず。明日早いんやろ。もう切るか」
「おやすみなさい」
「おやすみ」

いっときの感情で、私を本当に好いてくれている人を蔑ろにすべきではない。だから私は、彼氏が納得する友人づきあいをするべきだ。
そうわかっている。だからこそ私は絶対に私を愛していない男とは寝ないし、二股はともかく浮気なんて絶対にしない。でもこの人と仲良くしていたいと思うのは、いっときの気の迷い、なんかではない。だからこそ慎重に動かなければ。

心は揺れない。明日だって、忙しいなか彼氏は会ってくれるのだ。


そう思っていた。

簡単に私の心のバランスは崩れたみたいだった。あの電話を受けてから、彼氏の声が聴きたくなってしまった。だってここしばらく、彼氏はあまりにも忙しかった。こんなタイミングで、友人どころか「男の人」が突然現れるなんて、寂しさにつけ入られた気がした。彼氏の声を聞かないと、変になってしまいそうだった。
彼氏と違って、あの友達は私を甘やかしてはくれないけれど、彼氏と違って私がさみしくて悲しい時、ちゃんと話しかけて来てくれる。彼の前では泣きたくないけど、あの友達の前ならいくらでも泣けそうだ。
彼氏は忙しいから、しかたない。今日も約束した時間に、電話はかかってこない。息が苦しい。そのかわり優しい。そのぶん優しい。欠けを埋めるように優しい。ああ欠けているのか、そうか。ああ。

そう納得している気でいた。
いや納得していた。なのに、昨日のアレで、納得できなくなった。へんだった。
彼と築地から銀座を通って日比谷まで歩いていた。
私は真昼から、帝劇の前でぽとぽとと涙を落とした。へんだ。涙が止まらない。私がこんなにも不安な気持ちで揺れているのに、楽しそうに仕事の話をする彼が、別の世界の生き物に見えたから。私の彼氏じゃないように思えたのだ。

この人はやっぱり私と違う。しょうがないんだけれど。違う人間なんだから、そんなのは。ばかみたいに優しくオロオロして、私の涙を拭いた彼の手を払った。「どうしたの?体調わるい?」優しい。優しい。優しい。優しい。言わない。言わない。言えない。言うべきでない。優しくあれ。
ほんとうの涙の理由なんて言わなかった。あなたが知らない人に思えたから、なんて言えるわけがなかった。悲しい。優しい。

「ぼくはみーちゃんの彼氏だから、いくらだって優しくするよ」
「損しますよ」
そう返すしかない。ばかをみる。そんな想いが報われたことなんて、親子ならともかくこと男女においては、ないのだ。
可哀想だ。この男のひとは、かわいそう。楽しむつもりのデートで、こんなにもわけのわからない理由で彼女が壊れて。

友人だって優しくないわけではない。むしろ優しいのだ。性欲を感じさせない、全人類的な優しさ。
だからわからなくなる。あんなにも「おれは友達が多いから、さみしくなんてならんわ」と言っていた彼が、半年もしないうちに変わってしまった。知らないうちに彼は、少年でなく男になってしまったんだろうか。

どうしよう私は寂しい、寂しくて、やっぱり寂しさは判断力を鈍らせる。

新年のご挨拶⛩

あけましておめでとうございます🌅

筆が乗るので、今週はもうすこしだけ日記を書きます。

インターネットの片隅にあるブログで、新年のごあいさつ。どれだけの方がこれを読んでいるのでしょう。ごく少ないことには違いないのですが、あなたとわたし2人だけだったらいいですよね。


この前、腐女子の友人と興味深い話をしました。
"わたしたち2人だけだったらいいね"
って私は恋人には心からそう思うことが多かったのですが(オタク界隈でいうとメリバ厨寄りなんですかね)、友人はそうではないと。
「社会復帰できるCPが好きなんだよね」

私は社会から逃避できるCPが好きです。
ちなみに彼女とは、「腐女子の恋愛傾向は推しCPと相関がある」という意見で一致しています。


私の恋における悩みって、社会的・外的要因が占める割合が多かったのです。結局社会と恋愛を対立するものとしか捉えられなかったんだと思います。


具体的な話で言うと、前の彼氏は見た目が気にいりませんでした。
さらには親をとんでもない理由で喪ってましたし、周りからは「もっといい人いるじゃん?」「ひずみサンならもうちょい上目指せよ笑」「絶対ヤバイから逃げたほうがいい」とまで時折言われてました。

人の恋人をみて上とか下とか序列をつけるのは人として問題外ですし、それを聞いた時には憤慨しましたが、わたしはそれを無視できませんでした。

見栄っ張りなんです。誰がきいても羨ましがる恋愛がしたかった。
本当にわたし、虚栄心だけが肥大していて、自信がないのです。


そういう、身近な他人の心ない言葉、反対に親しいひとの心配、外の雑音。
社会的常識にもとづく助言に心傷つけられることが多かったから、彼とは、2人だけの時間で癒されるしかなかった。2人だけになりたかった。
でも、社会↔︎恋愛とか、そういう対立が生じてしまうと、もう恋って長くないですよね。


段々、付き合いが長くなって彼の存在が希薄になると、社会の声が大きく聞こえるようになってきて、無視なんて出来なくなってきた。常識人って、とっても親切なんですから。
本当にびっくりするほど親身に説得してくれます。

親が自殺してるような男と理解しあえるはずがないよ。
ひずみさんって恵まれてる家庭の子だし。結局そういうところ、相手の生まれとか育ちとかって諦めるしかないから。

心から「わたしの」幸せを願って、そう言ってくれるのです。「わたしと彼の」幸せなんて、興味ないんでしょうね。当然。


内側の彼よりも外側の社会の方に天秤が傾いた。そんな話なのかもしれません。まあ、よくある話。
だからやっぱり、私は人に胸を張れる人と恋愛しないと、「この人がいいんです」って言えない。私は、彼氏が人に胸を張れる素晴らしい彼女でありたいと思っているから。
それに、まだ出会いの絶対数が少なくて、自分の審美眼や価値観に自信がないから、主体的に恋愛をすることができない。早く成長しなければ。

しかしながら、この人無理だな〜って感情が湧くことも当然あるので、自分の中にも譲れない条件があるのだと思います。

今回も複数の人と並行して進めつつ、喜ばしいことに、いちばんいいと思った方とお付き合いできることになって。そういう優先順位のつけかたってあるじゃないですか。時とタイミングによるものも大きいですが。

前途ある恋愛のために、そろそろ自分の価値観を成文化するべきなのかもしれません。



今度の彼氏は、愛された家庭の子だけあって、家族で行った海外旅行のお話をしてくれます。お母様がいかに強い方なのか、面白おかしくお話してくれます。
私より年嵩なのもあってか、私を外に連れ出してくれます。ひそひそ話にむいたうす暗いお店に、静かなカフェに、緑豊かな庭に。

真っ暗な西麻布をあるいて、「私たちもタクシーでここまで来たけれど、タクシーばっかり止まってるのね」「じゃあ僕たちはここから六本木までお散歩しよう」って言って。手を繋いでくれるのです。


ああ、失敗から学ぶ人間でありたいと思うあまり、前の恋愛を相対的に悪いものとしてしまいます。

ごめんなさいね××くん。無欲で優柔不断なあなたのことだから、結局リクルーターの振りまく情に引っ張られて、あの会社に行ったんでしょう。
40代にならないと1000万貰えないんだっけ。最後の別れの時、そうやって質問しました。それを聞いて悲しそうな顔をしたあなたを、今でも可哀想とは思えないのです。

だってあなたはその道を選んだんだから、私の事実確認に傷つく必要も、権利もないのです。
そんなことで揺さぶられる男なんて、私の途には要りません。私は子どものために、良い家庭を築きあげるという野望があります。
その理想を想定した時に、配偶者になるやもしれぬ異性の年収は、重要なファクターになります。

「お金目当てだったの?」その質問に幻滅しました。半分、傷つけるつもりで言ったのは否めませんでしたが。
お金目当てだったら大学生のお前となんか付き合うわけがないだろう。

そういう、今きいた言葉にばかりとらわれて、将来を想定できない様子に苛立ちました。
そういう、私の意見に大仰に傷つき、不安がる、悲しがりなところが大嫌いでした。あまりに相手に鈍感で、私のことを、冷たい人間だと思い込んでいるところが、大嫌い。

そう、私はいつしか、幸せな出来事を彼に報告することすらできなくなっていました。

だってそれは彼の手にはないものだから。幸福に飢え、幸福を羨ましがり、彼自身の手にある不幸に傷つくに決まっている人間と、わたしの手にある幸せを分かち合うことなんて無理なのです。見せびらかしているのだと思われて、傷つけてしまうのだから。


傷つけあうしかないお前と付き合うことより、幸せな家庭を持つことの方が私にとっては重要なの。
私の幸福への道すじに、彼の幸福は重なりませんでした。
優しいが了見の狭い、弱い男。あなたみたいな男は、小花柄を好んで着るような、弱っちい田舎女とせいぜい小さく幸せになればいいのです。
彼がいないと生きていけないような、無力な女と。なま優しくてダサい男にはなま優しくてダサい女がお似合いです。

だからきっと彼は言ったのです。「もっとすごい人に幸せにしてもらってください」と。

私は誰かに幸せにしてもらうつもりはありません。自分たちの手で、自分たちを幸せにするのです。そういう人と幸せになりたいのです。そういう蒙昧な感性も憎々しくて、「少なくともあなたはもう要らない」と言って手を払いました。


ほんとうにわたしは、見栄っ張りなんです、やっぱり。昔より今いる人が、いちばん素敵なんだって思いたいし思われたいのです。そんなの、ボジョレーヌーボーみたいだとは思うけど。
ボジョレーヌーボーなんてくだらないと忌避する男より、ボジョレーヌーボーを飲んで去年と何が違うのかね?他のワインも飲んでみよう、って言いながら笑える人が良いのです。ある程度見栄を理解できる人と付き合わないと、ダメなのです。

それが真の贅沢です。少しの回り道や余分すら楽しめない人間が、私の思い描く幸福を理解できるはずがないのです。


今のところ、私は今の恋人との関係を社会的文脈に置くことができています。
なぜなら私よりも社交的な彼は、私以上に外を知っていますし、私の見た目をいたく気に入っている彼は、私と外を出歩くことを楽しんでいます。
趣味(hobbyというよりtasteやpreferenceの意味ですが)も私の知る限りほぼ被っているので、私はとても楽しむことができています。地雷をなんとなくわかっていると言うのは良いことです。ほんとうに、彼もそうだったらいいのですが。

極端な話、前の彼氏とは外に出るだけで恥ずかしいと思うことがありました。
公的なところならまだしも、私設の美術館でクラシカルな絵を見るのに、(貧乏なのを差し引いても)よれよれのTシャツに半分壊れたサンダルを履いてくる、その感覚が理解できなかったのです。
彼は壊れていない靴だってちゃんと持っていました(全て壊れていたならこんなこと言いません)。そんなコンビニに来るような格好で、初めて行く場所にいくなんて。
「デートするときのお洒落」という発想も、もしかして贅沢品だったのかしら、と私は初めて学びました。そういう贅沢を知っている人としか、同じ方向は向けないんだなあと。

贅沢を知れば、恥も知ることができます。彼からすれば、私が何を恥ずかしがり惨めに感じているかすらもわからなかったのかもしれません。仕方のない話です。誰も教えてくれなかったのだから。ただ、わたしが教えることでもないから、別れただけの話なのです。


彼にテーブルマナーを教えたのも私でした。
学生ながら、教える仕事でわずかながらお金をいただいている私ですが、彼氏にものを教えるというのは中々気が進みませんでした。
彼は「私の生徒」ではないからです。
賢い彼にも賢い彼なりの高いプライドがあるのを、私は理解していました。

それでも、ぎこちない手つきで、フォークとナイフをかちゃかちゃとやる、困った姿を見かねて、教えたのです。
その時、明るく「ほうほう」と話を聞いてくれたら良かったのです、あるいはわからないなりに、マナーなんて話半分に、自信満々に食べ進めてくれれば良かったのです。自分のやり方で。

それで良かったのに、正しいやり方を知った後で、悲しい顔をするのです。さらには謝って来るのです。何に対する謝罪なのでしょう。気分を害したとでも言うのかしら。なら教えなければ良かったのかしら。
好きなお肉が、途端に不味く感じられました。


一つ前の恋は、モラルハラスメントじみた側面のある恋愛だったと自認しています。

前の彼は学歴こそこの上なく良かったのですが、社会的常識、それこそモラルの面において私が優位に立ちすぎていていました。
おかしな話、彼とはまともに喧嘩したこともありません。彼はなんでも私の言うことを聞いたからです。今ごろ彼には、モラルを盾にして自分を責め立てた酷い女として語られているのでしょうか。
彼はいつだって泣きながら謝って、ひずみが正しいと言いました。
それをなぜ不満に思うのだと思う人もいるかもしれませんが、私は元々彼を下に置いてねじ伏せたかったわけではありません。結果的にそういうパワーバランスに疲弊したのです。人として人と睦み合いたかっただけなのに、私は何が悲しくて召使いに命令や指導を繰り返しているのかと問いたかった。
虚しいだけでした。犬を飼いたかったわけではないのです。


今が幸せだと、どうも昔を思い出します。そうやっていると、今の人を抱きしめたくなるのです。感謝を忘れないために、こう言う手立てをとるわたしは、人として正しいのでしょうか。そうでなくともずっと感謝を忘れない人でありたいものです。

彼とはドトールにいかない

付き合うまえ、煙草を1年前と少し前にやめたのだ、と彼は電話口で云った。

「へー、そうなんですか。〇〇さんグルメですけど、ご飯美味しくなりましたか?」

私はせめて可愛いものをと考えて選んだ、フルーツの香りの細い煙草を、屋上の柵に押し付けて消した。

——うん、もう僕、すわないと思うよ。

ああ、吸殻は家に入れちゃダメだ、そう思って、ビニールに密閉した吸殻を、隣の家のゴミに紛れ込ませた。箱に残った数本も、まとめてゴミ袋に入れた。

なんだかその時、はじめて煙草がいい香りだって気がしていたから、棄てないといけないんだ、と直感したのだ。

もう吸いたいとも思わない、もとより食事が好きだから、口はそれで喜ばせればいい、らしい。たしかに、彼は無限にお店を知っている。

1年と少し前にやめて、あっというまに嫌煙家。

それは彼が彼女と別れた頃とほぼ同時期であり、裏を返せば、彼が彼女と結婚を決めた日なのかもしれなかった。

すてきね。家庭の・子どものためならすっぱり辞められるなんて。

彼は、そんな彼女に一方的に裏切られて、すたこらさっさと逃げられたのだけれど。お腹の子どもが実は違う男の種で出来てるなんて。畜生のすることね。

この世に存在できなかった彼の子どもの死体は、目黒川の底にねむる。水底できっと白金はきらきら。

わたし、そんなこと知らないから、この春、リクルートスーツで目黒川の桜を見にいった。その日五反田で受けた面接は、無事お祈りされた。

そりゃあ当たり前といえば当たり前かもしれない、半年後付き合う人の絶望が埋まった川で、お花見なんてしたんだから。おもしろいくらい、それは呪いだ。

でも私は嫌な女だから、そんな呪いのような奇跡すら尊べるのだ。

ありがとう、彼女がわたしなんかよりもぜーんぜん救いようのない女で本当に良かった。ありがとう、彼に正直に罪を告白してくれて。貴女のおかげで、いま私は倖せ。

あの会社の人事もありがとう、冴えないオフィスだと思っていたのが伝わったみたいだけれど、貴方の勧めで目黒川の桜を見て本当に良かった。あの川底に、捨て置かれた愛の脱け殻が落ちてるんだと思うと、もう最高に最低で、もう最高。

彼氏は今でも目黒を避けたがるし、しばらくは行けそうにない。だから、あの時桜を見られて良かった。ほんとうに。

きっといま一番遠い東京が、目黒なのかもしれない。

それはさておき、(目黒川に指輪を捨てるついでに越してきたという)今の彼の家は、本当に「彼の城」である感じがする。

なんというか、彼の好きなものがこれでもかというほどに詰め置かれていて、ひみつきちのような趣きだ。

それは私にとっても好ましい品々であるから、本当に、びっくりするほど居心地が好い。

ソファ(彼が寝転がって足が寸足らずになる長さ)に丸まって、彼の膝のうえに顎をのせる。今は私が主なのだと言わんばかりに。

彼が夏、1週間で棄てた女の臭いなど、わずかたりともない。彼の家は本当にびっくりするくらい、彼の匂い、もしくは彼の好きなものの香りしかしない。

それに彼は、わたしのためにニベアやミルク石鹸を買い置いてくれる。

2人でショッピングに行った時に買ったお鍋で、ご飯をつくる。私はクリスマスプレゼントに食器をあげた。その皿でご飯をたべる。歯を磨いて、お風呂に入る。フルーツの匂いのするシャンプーを、2人で使っている。

もっとはやくみーちゃんに出会いたかったよ、とか言う彼氏に、生乾きのままあたまを寄せる。

指輪をテーブルにそっと置くと、失くしちゃうからこっちにおくね、とか言ってデスクの方に移動される。

これは、あの夏だけいたあの女は、買ってもらえなかったもの。

これは、一年前の天災のような女がその途に捨てたもの。

彼が3ヶ月の分割払いで買ってくれたもの。あの日から3ヶ月は一緒にいられるという確約。ペイできるまで私は絶対に恋人で、あなたに愛される。それに2月にハワイの予約をしたのだから、それまでは絶対に私は愛されてるはず。

彼の匂いにわたしが混ざる。

ああ本当に、人から愛されるのって幸せで幸せで不安だ。失くしたくなくて涙が出る。愛を感じたいだけなんだけれど。較べて安心したくなるのだ。今までのどんな女よりも、私は幸せなんだと、そうはっきりと分かる証が欲しい。

彼の生活に、わたしが少しずつ食い込んでいく。

彼に爪痕を遺した彼女を、塗り潰すまであとどれくらいだろう?

「男の人から指輪をもらったのなんてわたし初めてだから、すごくうれしい」

ほんとう?とか言って彼も嬉しそうに笑って、抱きしめてくれた。

若くて了見の狭い私たちにとっちゃ、いつだって過去別れた恋人は悪人だ。今げんざい隣にいる人が一番素敵って思える毎日が、一番いい過ごし方なのだ。悪者のことなんて、綺麗さっぱり忘れて、わたしと・ぼくと幸せになってほしい。

普段から明るくて優しい彼は、私の前の恋人をすこし、ほんの少しだけ悪く言う。それが堪らなく気持ち良い。余裕を保ちつつ、男として上だと示すその様が愛おしい。

消してぬり潰して、陣取りゲームみたいなもの。連綿とつづく独占欲じみた祈り。

他でもない自分と、幸せになるべきなんだという思い上がり。

「うん、副流煙の臭いを嗅ぐとさ、首の横がギュってなるよ。わたしも別のとこで時間つぶしたいなぁ」

こんな回りくどい言い方をするのは、男だ色恋だやけっぱちで喫煙してさっさと辞めた自分が恥ずかしいからだ。本当にわたしは、しんからハタチそこそこの、乳臭い娘なんだと思い知る。

「昨日も行ったけどクリスピークリームがいい。昨日けいちゃんがドーナツ買うのみて、わたしも食べたくなってきたの」

それに、彼のために意を決して辞めたんだ、と思われるのが死ぬほどいやだからでもある。

あなたといると楽しくて寂しくなくて、自然に煙草とか辞めちゃったんだよね〜なんかそんないいもんでもないしさ、って、言外につたえたいからだ。

でもそれはあくまで、悟ってもらうのがいちばんだ。楽しさ、というのは、口にすればひどくチープで壊れやすい。

語るに能わない、愛よ。

「ドーナツおいしいよ。ひとくちたべる?」

私たちが口にするのは、煙でもなく、言葉でもなく、こういうもの、がいいのだと思う。

 

大人になれるかな?

なんだかんだ言って、親の与えてくれたしあわせを求めて、私は人から愛されようとするし、人を愛するのだと思う。


私たちは就職活動を終えた。猶予期間は残り半年もない。4月になれば、私たちは享受する側ではなく、提供する側にうつる。

社会にサービスを提供し、対価として金銭を得て、それで生計を立てるようになる。ひとりで生きる、ことになる。
ひとりで生きて、愛を勝ち得て、愛を育んで、幸せを求めて、親と同じように私は家を作る。ひとりじゃなくなるための戦い。


この世に生を受けて二十余年、家族からいっぱいの愛を受けて私は育った。
親から与えられた鉛筆とノートで、親子共々必死になって勉強し、中学受験をした。

男女別学に通うことになったが、それでも中学生の時、初めて男の人から性的な目で見られることを覚えた。


あまりにもお粗末な誘いのメッセージは、子どもにもそれとわかる性行為の香りがした。その頃の私はそれを悪意と受け取った。なんだか酷く薄汚く、饐えた臭いがしたからだ。

しかしながら、おかしなことに、ほんのわずかに、達成感があった。
(私は家族から取り残されて1人になっても、誰かの歓心を買える見込みがある、と思ったからだった。)

今ならなぜ、その文脈が、そんな誘いが悪意なのかがわかる。(当時は処女厨よろしく、性行為自体が悪だと思っていたのだが。)

性行為自体は悪ではないのだ。この私を、一方的な性欲の捌け口として扱うことに悪があるのだ。彼らは私の幸せなんてこれっぽっちも考えていない。


近くにある女子校の子が、彼氏とカラオケでセックスをしていた。
友達の通う女子校の子が、歳を偽って渋谷のナンパ箱に通う。

どいつもこいつも、散々恋愛の皮を被った乱痴気騒ぎをして、最後には「私の処女を返して」なんて、あまりにも浅はかで、愚かだと思った。

私たちのような、実際の男から切り離された女の子はみんな、セックスをするとおかしくなる。まともに愛を得て恋をすればいいのに、一足飛びにセックスするからだ。

だから私は、セックスがする前から大嫌いだった。少女から女になるということは、墜落であると思った。



そんな10代だったが、いいセックスと悪いセックスがある、と気付くきっかけが、17歳の時にあった。

今でも少し恐ろしいので、全体公開のインターネットに仔細を載せるのは憚られるが、私は1人の男に「売られ」かけ、その報復として騒動をおこして彼から職を奪った。

若き身体は金になる。性は高く値がつく。
わかってはいた、わかっていたからこそリスクを分散させて接点を作っていたのだが、それでもひどく心にこたえた。
悪意。悪意。ああ、悪意、これはまごうことなき。

怒りというものは得てして、熱ばかり拡散する、燃費の悪い感情なのだけれど、ひらめくような鋭い怒りというものを覚えた。私は鋭い怒りを、彼に刺し抜いた。

取り巻きの女たちからの好意を、ほしいままにするあの男。
裏のカラクリに気づきつつ、知らないふりをする取り巻きの女たち。
彼らのやりとりはぐるぐるまわる。マッチポンプ、完成された地獄。

知らない男達とセックスするよう強いられても、風呂に沈められても、彼女達の夢は覚めない。いつか信じた、彼との愛が幻だと気づくのが、何より恐ろしいからだ。


外から悪意のような欲望を受けることで、私はあるひとつの気づきを得た。

「彼らは正しい愛を知らないの!」

この場合の「正しい」とは、私(達)のなかで正しいとされる愛、ということだ。
多分彼らの国では、そういう簡単な性の、あけすけな欲のやりとりを愛と呼ぶのだろう。
知らない文化だ。

正しい愛に基づくセックスなら、いい。
彼らが悪いセックスをするのは、正しい愛を知らないからだ。

私は、欲をお仕着せられるなんてまっぴらごめんだ。丹念に、ありとあらゆる方法で幸を願われて育ったのだ。
時に教育の味は苦くとも、時に期待の味は辛くとも、そこには思いやりというものがあった。我が父や母は、痛ましいほど必死に、「我が子の幸せを願って」いたのだ。



きっと育ちのあまりに違う人とは、分かり合えないと思った。

私は、親がくれた愛をそのまま我が子に注ぎたい。ありとあらゆる方法で、我が子の幸せを願いたい。
だから、私の思う愛を知っている人と幸せになりたい。そんな人と、子どもに愛を教えたい。






こんな話をしたのは、就職活動を機に別れた元・彼氏のことを今唐突に思い出したからだ。
父を悲しい理由で喪った彼は、事あるごとに、「幸せな家庭が欲しい」と泣いた。


彼の求める幸せな家庭とは、なんだったのだろう。今では知るよしもない。当時ですら、聞くことが憚られた。

彼の考える「幸せな家庭」はきっと現実味を帯びていない。最初から最後まで、彼は、この世にあらざる人のようにふわふわとしていて曖昧だった。

彼の父の遺書には、「お前は自分ひとりで抱え込んでしまうから…」と書いてあったらしい。だから私は、馬鹿みたいに彼の痛みに寄り添うようにした。


それでも、(企業の選考開始日を目前に控えた)あの日、彼は私を捨てて1人になることを選んだ。私はただぼんやりと、「ああ、この人はひとりで社会に向かうのか」と感じた。

別れる時、彼はおかしなくらいに泣いていた。「もっとすごい人に幸せにしてもらってください」などと言って。

もしかしたら彼は、彼と私の考える幸せが異なっている事に、ずっと前から気づいていたのかもしれない。

悪因悪果

ただより高いものはないって本当のことで、私は結局恵比寿の焼肉屋でお祝いしてくれた28歳のプランナーさんとお付き合いすることになった。

なに一つ求められるものはない。ただそこにいるだけでかわいいかわいいと甘やかされる。ただ与えられ続ける、甘い承認の味が忘れられなかっただけなのかもしれない。
冗談めいた口調で、ぼくだけのアイドルになってね、って言っていた。

趣味の合うひとだ。食べ物の好みも、カルチャー面でもそう。
シフォンも花柄も淡い色も、田舎女の着るものだと切り捨てがちな私に、少女としての無上の肯定をくれた。6つも下の娘を捕まえて、もっと可愛らしくしなさいだのと言っている男がいたら見てみたいものだけど、私の黒い革小物や金の鋲を指して「それ可愛いね」と言われた時少しほっとしたのは事実なのだ。

私が嬉々としておもちゃを見ているのを彼も楽しそうに見ていた。嬉々として好きな作品の話をするのを聴いてくれていた。

そこには、向こう4・5ヶ月間縁のなかった安寧があるような気がした。


半年経つ頃には私はこの人のもとを離れるだろう。もっとはやいかもしれない。
それはとてもかなしいことだし、さみしいことだと今思う。
生活が変わっても、私はこの人と関係を築けるのだろうか。

寂しさは癒えようと心は常に虚しい。
依存・欠けを埋め合うような付き合いではなく、憧憬・焦がれるほど好きな人と付き合いたかった、という昔からの願いは、いつだって私の心から自由と恋人をうばう。

「俺よりもっとすごい人に幸せにしてもらってください」という、前の彼氏の最後通牒をうけてもなお、私は変われなかったのかもしれない。

他でもないあなたが一番だいすきだったのだと、私はきっと口が裂けても言えないのだ。