Undine

憎んだり愛したり忙しい

悪因悪果

ただより高いものはないって本当のことで、私は結局恵比寿の焼肉屋でお祝いしてくれた28歳のプランナーさんとお付き合いすることになった。

なに一つ求められるものはない。ただそこにいるだけでかわいいかわいいと甘やかされる。ただ与えられ続ける、甘い承認の味が忘れられなかっただけなのかもしれない。
冗談めいた口調で、ぼくだけのアイドルになってね、って言っていた。

趣味の合うひとだ。食べ物の好みも、カルチャー面でもそう。
シフォンも花柄も淡い色も、田舎女の着るものだと切り捨てがちな私に、少女としての無上の肯定をくれた。6つも下の娘を捕まえて、もっと可愛らしくしなさいだのと言っている男がいたら見てみたいものだけど、私の黒い革小物や金の鋲を指して「それ可愛いね」と言われた時少しほっとしたのは事実なのだ。

私が嬉々としておもちゃを見ているのを彼も楽しそうに見ていた。嬉々として好きな作品の話をするのを聴いてくれていた。

そこには、向こう4・5ヶ月間縁のなかった安寧があるような気がした。


半年経つ頃には私はこの人のもとを離れるだろう。もっとはやいかもしれない。
それはとてもかなしいことだし、さみしいことだと今思う。
生活が変わっても、私はこの人と関係を築けるのだろうか。

寂しさは癒えようと心は常に虚しい。
依存・欠けを埋め合うような付き合いではなく、憧憬・焦がれるほど好きな人と付き合いたかった、という昔からの願いは、いつだって私の心から自由と恋人をうばう。

「俺よりもっとすごい人に幸せにしてもらってください」という、前の彼氏の最後通牒をうけてもなお、私は変われなかったのかもしれない。

他でもないあなたが一番だいすきだったのだと、私はきっと口が裂けても言えないのだ。